vol.14

2023.03.09

大内 佑介さん【地域おこし協力隊】

南阿蘇村に来て、自分を見つめなおした大内さん。基盤は、家族と自分。そこに立ち返って見えたこと。

自分がおかしくなっていく

自分が自分でなくなっていく感覚というのは、苦しいものだ。望んで就いた仕事のはずなのに、やりがいを感じているはずなのに、なにかが歪んでいくような。地域おこし協力隊員の中にはそんな感覚に悩み、転職と移住を選んだ人がいる。大内佑介さんもそのひとり。「東京が合わなかったんだと思います。地元は、自然が豊かなところだったから」。テレビ制作業界の仕事は、華やかな一方、激務。気持ちがどんどんやさぐれていくことにも気づいていたと、振り返る。とうとう人と接することが苦痛になり、妻(当時は婚約者)の地元の近くである南阿蘇村へ移ることにした。

「南阿蘇に来て、ちょうどいい距離感で人と接することができる。優しくて、温かい。最初はもっと田舎をイメージしていましたが、観光地として人がよく訪れる場所だし、思っていたよりずっと住みやすかった」。そう話してくれた大内さん。穏やかな表情を見れば、充実した暮らしの様子が伝わってくる。

伝えることの喜び

地域おこし協力隊として携わる観光の仕事は、すべてが初めてのこと。けれど3年続けてみて、「自分には合っているのかも。任期後も、観光関係の仕事ができたらいいなと思うようになりました」と、手応えを感じている。「観光に訪れた人たちを、どんなふうにおもてなしできるかなって考えるのが楽しい。『阿蘇っていいね』と言ってもらえたときは、うれしいです。気持ちが伝わった! って」。

着任当初は特に、コロナの影響を強く受けていた時期。困っている事業者の力になれないものかと始めたのが、ショップカードづくりだった。1店舗につき1枚作成して観光案内所に設置したところ、大好評。全種類持ち帰る人も多いそうだ。

観光局主催のイベントでは、MC役をこなすことも。2022年11月に行われたモルック(ボウリングに似たゲーム)のイベント会場には、参加者と一緒に一喜一憂しながらイベントを盛り上げる大内さんの姿があった。

「これから何をするにしても、家族や自分という基盤を大切にしたい。そのために選んだ、熊本での暮らしでもあるから」。そう話してくれた大内さん。そこに、やさぐれた陰はなかった。

【写真CAP】
1.道の駅あそ望の郷にある観光案内所には、大内さんが手がけたショップカードがずらりと並ぶ。カードを全部集めて、店を訪れる度にチェックする楽しみも。

2・3.イベントMC中の大内さん。親しみやすいアナウンスで会場を盛り上げていた。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2023年2月発行)より転載。

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