vol.32

2024.08.07

阿南 望さん【地域おこし協力隊】

かつて憧れた「大人」に。新たなる挑戦。ワイルドに、カッコよく!

〝職人〞として

世の大人は、「子どもたちには夢を持っていきいきと歩んでほしい」と願っていたりする。では、子どもが憧れるカッコいい大人とは? 

「自分にとってのそれは両親だった」と、阿南望さん。節くれだった手で大工道具を握る父の背中。冷蔵庫のありあわせ食材を使って、魔法のように料理を拵えてしまう母。「行動で示せるってカッコいい。何かを追求して、没頭している大人。言うなれば、職人かな」。

この職人という在りようを、阿南さんはジビエをテーマに据えた協力隊活動にも見出しているようだ。「自分は料理人として三次産業に携わってきた。ジビエは、一次(狩猟)から六次(加工)までのすべてに関わる。獣としての生態、さばき方、森の生態系、阿蘇という地形や狩猟の歴史まで。ひとつ知れば、もっと知りたくなる」。料理人目線で言えば、地場のジビエはオリジナリティのかたまり。またとないコンテンツとなりそうだ。

父の挑戦を、子どもたちに見せたい

長年心血を注いだこれまでの仕事を離れ、南阿蘇へ、地域おこし協力隊として移住する。その選択をするか否か、阿南さんは相当悩んだらしい。「けれど、決めた。いそがしさにかまけて守りに入っていた自分を脱却しよう、いっぱい恥をかいて新しいことを学んでみようって。そういう姿を、子どもたちに見せたいな」。

阿南さんの本気に、妻も力強く背中を押してくれた。いまでは、3人の子どもたちも一緒に、登山や虫捕りをして楽しむ時間が増えたという。

誰かの歓びに寄り添う仕事

阿南さんの仕事のスタンスはとても明快。「誰かに笑ってもらえることが、自分のエネルギーになる」。仕事内容としては料理から少し距離を置いても、その軸が変わることはない。協力隊活動における目標のひとつは、ジビエの解体処理施設の完成。「たとえばその横にBBQ施設を作って、食育を考える場にするのもいいかも」と、その先の展望を語る。「まずは自分が、命をいただくという行為を身近なものにしよう」と、狩猟免許を取得したところだ。

「自分がどこまでできるか、正直なところ未知数です。でも、ワクワクしてる。人生、ワイルドにいきたい」。そう言って、ニヤリ。そのカッコいい背中に、大人も憧れずにはいられない。


【写真説明】
1. 同じプロジェクトの盛山さんと。軽妙なやりとりが楽しい2人。
※写真に写っているのはケースのみ。銃は入っていません。

2. 有害駆除されたシカやイノシシの尻尾は、役場に届けられる。数を数えるのも仕事のうち。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2024年3月発行)より転載。

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