vol.33

2024.08.07

盛山 裕史さん【地域おこし協力隊】

ハンター×料理人。自分なりの、いのちとの向き合い方。

料理のおもしろさにはまる

「料理の魅力は、食べた人みんなが笑顔になれること!」そう話してくれた盛山裕史さんの転機は、学生時代。飲食店でのアルバイトが楽しいあまり、なんと大学を中退してスタッフになった。そのうち、勉強を兼ねて店のまかないを作るようになる。「先輩に褒めてもらえるのがうれしくて、もっとうまくなりたいって欲が出てきた」。

それまで本格的に料理を学んだことのなかった盛山さんは「料理の芯」とも言うべき基礎を学びに単身イタリアへ。寝る場所と食事の提供を条件に、数軒のレストランの厨房で働いた。ほとんど武者修業だ。

帰国してからは東京の飲食店に勤務。その後、妻と2人で福岡へ移住する。

目指すは料理人ハンター

福岡の飲食店で働いていた盛山さんの元に、あるとき、捕獲された野生のシカが届いた。すでに息を引き取っていたが、まだ温かい。「ブワーってアドレナリンが出てきて。ああ、『ここから』なんだって実感したというか。自分が料理できるのは、誰かが野菜を作ったり、動物にとどめを刺したりしてくれているからだよなって…」。

「躊躇したらダメだ。それはシカに失礼だ」。自らの手で黙々とシカをさばきながら、明確な言葉にできないものを、盛山さんは感じ取っていた。そんなときに目にした、ジビエがテーマの地域おこし協力隊募集の情報。「これだ!」盛山さんの目指す方向が、「ハンターでもある料理人」へと集約されていった。

初めて触れる知識を飲み込み、地域の鳥獣被害の現状を確認し、猟友会のベテラン陣の話をとにかく聞くことから始まった仕事。晴れて狩猟免許を取得してからは、仕掛けた罠の見回りやかかった鳥獣の捕殺も少しずつ行っている。

これまでの仕事とはかなりのギャップがあるものの、「なんでもおもしろがれる」盛山さんのこと、日々の新発見を楽しんでいる様子。「料理に軸を置くことは変わりません。狩猟免許を取ったことで、地域のために具体的にできることが増えたのは一歩前進」。

いのちと正面から向き合う。そう覚悟を決めた料理人の挑戦は、始まったばかり。


【写真説明】
1. 箱罠に入って作業中。動物の生態をふまえて設置場所を考えるのも、なかなか難しい。
2. 球磨村にて研修。イノシシの解体を学ぶ。
3. 林床に仕掛けた、括り罠。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2024年3月発行)より転載。

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