vol.35

2024.08.07

黒崎 以朗さん【地域おこし協力隊】

自分で考えて決めて、手を動かすことにこだわりたい

運ぶ人からつくる人へ

地域おこし協力隊制度が、未知の世界へ飛び込む後押しになることがある。黒崎以朗さんの場合がそう。東京から熊本県南阿蘇村へ。縁もゆかりもない土地へ来たのは、農業を学ぶためだ。「東京のふるさと回帰支援センターに農業がやりたいと相談したんです。熊本は水がいいし、農業が盛んだと聞いて。情報収集するうちに、南阿蘇の新規就農プロジェクトのことを知りました」。

前職では、青果物の配送業務に従事していた黒崎さん。次第に、消費者のもとへ運んでいた青果物そのものへ興味を抱くようになっていった。「食へのこだわりが強いお客さんが多かった印象ですね。会社では、野菜の販促知識を身につけるために、生産者の話を聞く機会もそれなりにあって。野菜が育つ背景に、すごく感動しました」。

農業、ありだな。黒崎さんのなかで育っていった気持ちがついに動いたのは、コロナ禍でのこと。「お客さんに対面で『ありがとう』って言ってもらえるのが、やりがいだった。それができなくなって…」。これをチャンスと一念発起。運ぶ人から、つくる人になるべく、舵を切った。

誰かの「おいしい」を聞きたい

「熊本といえば、トマト」。これまでの仕事柄、商品として扱ったこともきっと多かっただろうトマトを、独立後の栽培品目に考えている黒崎さん。研修を通して、「つきっきりで様子を見ないといけないから、栽培が難しい。けれど、そこがおもしろい」と手応えを感じている様子。自らが農業を学ぶ立場になったことで、前職で感じていた「お客さんのこだわり」についても、「こういうことか」と納得できるようになったとも話す。

「作り方次第で、味も栄養価も収量も変わってくる」。品質、規模感、収入。自分がどのラインを目指すのかは、判断が難しいところだ。学んでは考え、実践しては考え。

でも、これだけは決めている。

「せっかく農家になるのなら、『おいしい』って言ってもらえる農家になりたい」。地域の人にこそ選んでもらえるおいしいトマトを作ることが、当面の目標だ。いずれは、観光農園としての展開や海外輸出も視野に入れている。

【写真説明】
1. 機械の操作方法を学ぶ黒崎さん。
2. 協力隊仲間の、さつまいもの試験栽培をサポート。
3. 研修先のトマト農家にて。「管理が難しいぶん、飽きないです」。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2024年3月発行)より転載。

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