vol.37

2024.08.07

江藤 俊希さん 【地域おこし協力隊】

可能性に色づく世界。自分らしい、農業とのかかわり方

家族と自分の役割

江藤俊希さんの両親は、フレンチレストランを経営している。両親は料理を、江藤さんは野菜づくりを。家族の役割分担の一翼を担いたいというのが、食や農業に興味を持ったきっかけだった。

県立農業大学校で農業に関する基礎を身につけた江藤さん。そのまま就農を目指すことも考えたが、さらに2年、地域おこし協力隊として学ぶことを選択する。

というのも、家族の拠点が熊本市内から南阿蘇村へ移ったから。かねてより両親が思い描いていた「農のかたわらにある食」。その実践のために店を移転、家族で移住したのだ。
「自分の役割は、地域とのかかわりをつくること。移住していきなり就農するより、まずは地域おこし協力隊として、地域を学びながら交流を深めることが大切かなって」。

いろいろな可能性

食や農業関係以外にも、さまざまなことに興味を持っている江藤さん。農家になる、というよりは、多業を組み合わせた展開を考えているという。「感性が向かう先」としていくつか挙げてくれたのは、服飾や絵、写真など。

たとえば作物の生長過程や店の料理を写真に撮ったり、野菜をキャラクター化した絵を描いたり。味わいだけでない、食にまつわる多面的な魅力に気づかせてくれる。とりわけ色彩へのセンサーが強いようで、「西洋野菜のカラフルさが好き」。こうした江藤さんならではの柔軟な視点と発想力は、野菜づくりを学ぶうえでも遺憾なく発揮されているようだ。

「農業って、やり方も考え方も人それぞれ。正解はないんだよなぁ」。ある人はAという手法がいいと言うけれど、別な人はBがいいと言う。それだけ、多種多様な可能性にあふれているということだ。江藤さんは、人の数だけある考え方を否定しない。そのうえで、小さな可能性の一つひとつにそっとスポットライトを当てるのが、とても上手なのだと思う。

そんな江藤さんらしい農へのかかわり方は、私たちがこれまで思いもよらなかった美しく多様な世界を見せてくれるかもしれない。


【写真説明】
1. 農業みらい公社が管理するワイン用ぶどう園で収穫作業。

2・3. 両親が営むフランス料理店、ラ・ビネット。店前の畑で西洋野菜の栽培に挑戦中。「管理がうまくいかなくて、バースニップの芽が出なかったのが悔しい」と江藤さん。精進あるのみだ。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2024年3月発行)より転載。

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