vol.20

2023.03.12

田上 由菜さん【地域おこし協力隊】

南阿蘇村は祖父母のふるさと。田上さんにとっても、小さいころから親しんできた地域だ。家族そろって念願の移住を果たしたいま。毎日とっても忙しくて、毎日すっごく楽しい!

南阿蘇村は心のふるさと

「空気がよくて、水がきれいで、人が優しくて、天国みたい」。田上由菜さんの南阿蘇村のイメージは、小さい頃から変わっていない。祖父母が南阿蘇出身のため、学校の長期休暇を利用して村内の親戚の元へ度々「里帰り」していたと話す。「南阿蘇で暮らしたい」。そう、ずっと願ってきた。

その手段のひとつとして、高校生のときから地域おこし協力隊という全国の制度があることも調べていたという。大学を卒業した年に募集が出て、そのまま着任の流れに。

仕事と自分事

協力隊として従事するのは、有機農業推進プロジェクト。とはいえ、農業についてはずぶの素人だ。本を読んだり、協力隊として活動したりするなかで、田上さんなりに向き合っている段階にある。

「この風景を、10年、20年先まで残していくために、自分に何ができるのか模索中です」。農業への関わり方は人それぞれで、いいとか、ダメとかではない。それが、いまの落としどころ。正直なところ、その間に横たわる溝の思いがけない深さに悩むこともある。でも、「ふと見上げたところに阿蘇山があると、悩みも吹き飛んじゃいます」。

村で暮らしてみて気づいたのは、「意外と忙しいぞ」ということだ。協力隊の仕事は一応休みなのだけれど、農家の手伝いに呼ばれたり、個人的に興味のあることに手を出したり。仕事と自分事の境界はあいまいで、「でもそれが、嫌な忙しさじゃない。むしろすっごく楽しいんです」と、田上さん。弾むような口ぶりで話してくれたことのなかで特に印象深いのは、小麦づくりのことだ。

パンが好き、という理由で「自分で小麦を育ててみよう」と思い立ち、親戚の手を借りて業務外で実践。麦踏み(30センチくらいに育った麦を踏み倒す作業)では、「小麦が死んでしまうのではないかと不安になった」が、しばらくすると「グワッと起き上がってきて、生きてるんだなって感動!」。

結果的に70キロを収穫したが、大変だったのはむしろその後のほうだ。「製粉の工程を考えていなくて…」。結局、小型製粉機を借りて製粉作業に明け暮れることに。小麦を育ててパンを作る。その間を考えることの重要性と農家の苦労の一端を、身をもって学んだ田上さん。その経験はきっと、何ものにも代えがたいものになったことだろう。

興味を持ったなら恐れず挑戦し、吸収して、自らの糧にする。そんな田上さんの体当たりな姿勢に、ハッとさせられた。


【写真CAP】
1. 電話対応では、早口の熊本弁のやりとりに四苦八苦することも。

2・3.村の空き家バンクで購入した家で、家族と暮らしている。愛猫キャスのことは、「世界で一番愛しています」。

4.イギリス、アイルランド留学の経験あり。久しく英語を話していなかったので、「感覚を取り戻したい」とのこと。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2023年2月発行)より転載。

このインタビューをシェア!