vol.23

2023.03.13

鈴嶋 千芳子さん【地域おこし協力隊】

海外生活で興味を深めた「食」。そこから農業の世界へ。目指したい暮らしに向かって、”やりたい”に素直になる。

海外で知った日本の食事情

鈴嶋千芳子さんの経歴は、地域おこし協力隊メンバー内でも異色だ。大学進学を機に東京へ。卒業後は、ヨルダンの日本大使館へ勤務。農業に関連する職場ではなかったが、SNS等を通して、日本の食にまつわる情報に触れる機会が多くなっていく。「今思えば、もともと食に興味があったのかも。当時は、オーガニックって身体にいいんだろうな〜くらいのイメージだったんですけど」。農薬、輸入依存、遺伝子組み換え…。まずは知ることから、鈴嶋さんは少しずつ、自分自身の問題として食を捉えるようになっていった。「自分で農業をやりたい」。それは、ごく自然な帰結。

まずは農業の基本を学びたいと思っていたところに、カンボジアで、有機JAS認証取得のための農家研修などを行うNGOの仕事があることを知り、転職。事務作業が中心だったが、土地の特性を活かしたカシューナッツ栽培など、自分のやりたい農業につながるヒントがいくつもあった。

やりたいことを、楽しみながら

帰国後、熊本県を拠点に土地探しを始めた鈴嶋さん。着目したのは、農業の根幹をなす土。火山由来の黒ぼく土がある阿蘇は、有力候補のひとつだったそうだ。タイミングよく地域おこし協力隊の募集がかかり、南阿蘇村へ。

協力隊として携わる農業の現場では、初めての体験ばかり。「素人だから、なにをすべきかがそもそもわからなくて。管理って、いつ何をするのとか。ちょっと遅れたら、畑が雑草だらけ」。それでも「太陽の下で体を動かすことが好き。土と空気と水と太陽があって、種から作物を育てられることの魅力を実感しています」と、にっこり。目指すは、地域循環型農業。ひとりで切り盛りすることをふまえ、できるだけ海外資材や農薬に頼らず、無理なく生きていく道を模索したいと考えている。その栽培方法に合った作物を何にするかは、まだ検討中だ。パン好きの鈴嶋さんには、グルテン含有量の少ない古代小麦の栽培構想もある。

やりたいという気持ち。それを種に例えるなら、鈴嶋さんはいま、種を芽吹かせるための自分という土を耕しているところなのだろう。

【写真CAP】
1・2. 農業公社にて、白菜を育苗中。定植まで大切に育てる。

3. 古代小麦の播種をしているところ。雨量の関係で阿蘇では小麦が育ちにくいらしく、圃場をどこに持つかも検討中だ。古代小麦の起源は数千年前にさかのぼるとされ、現代ではアレルギー反応が出にくい食品としても注目される。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2023年2月発行)より転載。

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