vol.24

2023.03.14

吉田 洋樹さん【地域おこし協力隊】

農家になることの意味を深く見つめる吉田さん。諦めないで、背負い続ける。軽やかな覚悟を携えて。

当事者になる決意

「日本の産業を支えるひとりになる」。吉田洋樹さんは腹を決めた。「農業で独立するということは、背負うこと。人の縁、自分の暮らし、経済的なことも諦めないでいたい」。心から信じられるものに出会えた。そんな自信と確信に裏づけされた言葉。

20代前半、健康志向の高まりから、スーパーで手に取る食品の品質表示に目が向くようになった吉田さん。小さな枠に並ぶ添加物の名前や化学式。なぜこんなにもたくさんの物質を使う必要があるのか。素朴な疑問から独自に調べていくうちに、安心・安全な食べ物への興味が深まっていく。

農家になると決めた吉田さんが向かったのは、宮崎県のとある有機農家。1年3ヵ月、研修を受けながら実際の現場を肌身で実感した。「代表は、四六時中農業で頭がいっぱい(笑)。いつも一生懸命で、感覚と熱意とエネルギーがすごい。やっぱり、農業はおもしれぇなって」。技術を覚えることより、農家として動ける身体をつくることが研修の主目的。なんでも生で口に入れてみる習慣が身についたのもこの頃で、「生食って、安心・安全の象徴みたいなことかも」とのこと。

会社員としてのビジネスしか知らなかった吉田さんは濃厚な人間関係に戸惑うこともあったそうだが、「自分が、じゃなくて、お互いに知っていくことが大切」だと気づいたことで、地域に根づくことの意味を考えるようになっていく。村の地域おこし協力隊になったのは、「地域とより深い交流ができそうな点に魅力を感じたから」だ。

背負い続ける覚悟

南阿蘇村での暮らしぶりについて尋ねると、「軽トラを運転しながら、最高かよ! って何度か叫んじゃいました(笑)。 山と空と雲のコントラストがいいですよね〜」と茶目っけたっぷりの返答。それからこう、言葉を重ねた。「農業がこの景色を守れる立場にあることを、誇らしく思います。ここで農業を営んでこられた先輩たちを心から尊敬する」。吉田さんが背負うもの。そこにはすでに、「南阿蘇村の景色」が加えられている。

「背負い続ける。(死んで)横たわるまで」。決意に満ちた言葉が重く感じられないのは、誰よりも吉田さんが、自らの選択を楽しんでいることが伝わってくるからだ。

できるだけ化学肥料や農薬に頼らないで済む農業。さらには、人の手を介さずとも、畑がひとつの生態系として成り立つような。「そのための土づくりを基本に」。吉田さんが笑顔で口にする理想には、逞しさと力強さ、軽やかさがあった。

【写真CAP】
1.「誰よりも動いて、身体を動かしていきたいですね」と吉田さん。

2.協力隊としてイベントの企画・運営にも携わる。「独立後もこんな風に、イベントができたら楽しそう」とアイデアを巡らせている。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2023年2月発行)より転載。

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