vol.27

2023.03.14

家入 明日美さん【地域おこし協力隊】

17年振りに戻った熊本。言葉を紡ぐ生き方を中心軸に、「ただいま」と言える場所を増やしていく。
※一人称記事です。

編集者というありかた

編集者、ライターとして、10年以上「書く」ことに携わってきた。しかし、同じ職業(地域おこし協力隊)に就く15人分の記事を一度に書いたのは、今回が初めてのこと。当然、15人いれば15人分の人生がある。一人ひとり、異なる幸せ、異なる価値観、異なるものさし。近しいかもしれない、と思う人がいてもピッタリ同じなんていなかったし、一見かけ離れたテーマで語っている人たちの深い部分に、共通項を見つけたりもした。

つくづく思うのは、ニンゲンという生き物の不可思議さ。正しいかそうでないかという尺では測れない、何か。自分自身も含めて、そこに横たわるある種の謎こそが興味の対象。だから、この仕事を続けているのかもしれない。

お守りで戒めの言葉

熊本で過ごした頃を振り返って印象に残っていることのひとつに、高校の教師の言葉がある。「救急車のサイレンが鳴ったら、勉強なんて放り出して教室の外に飛び出していく人間になれ」。人にも物事にも、他人面をせず関わっていけ。私には、お守りであり戒めの言葉。

大学進学以降は北海道へ。大学では野生動物の研究に没頭し、就職後は編集者として北海道を走り回る生活。そうしてたくさんの、お守りで戒めたる言葉を分けてもらってきた。

「生きるって、すごい」。取材を通してその人の大切にしているものに触れさせてもらう度に幸せを感じ、同じくらい、不安になることもあった。苦しくてしんどくて、楽しい仕事。文章を紡ぐことを通して、言葉ひとつ分、相手と真剣に関わることから逃げずにいたいと思う。

北海道も、そこで出会った人たちも大好きだ。けれどあるとき気づいた。生まれ育った熊本のことを、なにも知らない自分に。

「ただいま」と言える場所

北海道を離れるとき、友人たちには「行ってきます」と告げた。私にとって、北海道はもう「帰る場所」だったから。そしていつか、南阿蘇村も自分にとって「ただいま」を言える場所になればと思う。

地域を学び関わりながら、自分を馴染ませていく。地域おこし協力隊のありかたをざっくばらんに表現するなら、そんなところだろうか。協力隊全員が移住者であることを考えれば、私が携わる移住・定住促進プロジェクトにおいても同様のことが言えるだろう。まずは、言葉ひとつぶんから、お互いを知って関わり合う。その段階をサポートするような活動をしたい。この1年、地域の人たちの話に耳を傾けながら辿り着いた、現時点の結論だ。

【写真CAP】
1 空き家・空き地バンクへの登録相談、移住相談などに、役場職員と一緒に対応する。今後は、地域の物語を記事にして発信したいと考えている。

2.村の暮らしを体感してもらう交流会を企画。「村の素敵な人と会えてうれしい」「移住したい気持ちが再燃した」と感想をいただいた。

3.副業で、情報発信講座(文章、写真、デザイン)の講師を担当。任期後の目標は起業と、熊本・北海道の二拠点生活。

インタビューしてみての感想

地域おこし協力隊ヒトコト録(2023年2月発行)より転載。

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